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ファスト映画、再び

2021-12-06

4か月前にアップしたコラム「ファスト映画」の後、多くのファスト映画紹介サイトが YouTube から姿を消しました。
さすがに逮捕される危険を冒してまで映画紹介サイトを運営しようとは誰も思わなくなったのでしょう。
個人的には少し、残念です。

私は、「世の中にファスト映画を擁護する意見が一つもない」と書きましたが、先月、Abema Prime というニュース番組で、ある意見と出会い嬉しくなりました。
コンテンツ産業の経済分析を行っている経済学者、田中辰雄教授の弁は以下の通り。

  • あるコンテンツをカタチを変えてメディアに流すと、経済的な効果が得られる。
  • その宣伝効果による利益は、紹介されなかった場合よりも大きい。
  • 今回の摘発は、映画業界としては悪手と言わざるを得ない。残念である。

田中教授も「著作権は守られるべきだし、著作権者の意に背いての改ざん・発信は許されない」としながらも、コンテンツの存在を知らなかった人や魅力に気づかなかった人への広報・宣伝が、多くの利益を権利者に還元することになる、とのこと。
これは、YouTube 上でのゲーム実況配信やライブ映像の配信が成功している事例を見れば明らかで、古くは「ラジオで音楽を流すとレコードが売れなくなる」といった業界からの間違った声があった歴史からも明らか。「そのもの」でなければ、宣伝効果がコンテンツの拡散と浸透を促すチカラは、文化の発展(醸成)に寄与するものである、との意見でした(と、私は解釈しました)。

「拡まることこそが正義」。
好きな考えじゃないけれど、Windows OS や、ベータマックスを駆逐した VHS の成功にもつながる真理ですね。

かのニュース番組は冒頭「ファスト書籍」に関する討論で始まりました。
世の中には、一冊の本を4枚程度の表やグラフにまとめて紹介する人がおり、それを見た人が「その本のことは理解した気分になり、その本を購入しない」という現象が起きているそうです。
対象の書籍は専ら、ビジネス書や啓発本が大半で、そりゃそうだと思った次第。
出席しているコメンテーターの意見の多くがファスト書籍に批判的な中、田中教授は「アリ」の意見で孤軍奮闘。
「基本的にはファスト書籍も良いこと。そういった要約があることで、それを知らなかった多くの人が情報の入り口に立てる。それにより本の売上が落ちるのであればそれは問題と言えるかもしれないが、過去の調査では売上を伸ばす効果の方が大きかった。ファスト書籍についても今後、調査されるべきだろう」
ここまで断言されて唸ってしまいました。

このスタコラメンバーの一人でもある高尾さんは、自著「中小企業のための社内研修の効果的な進め方」を4枚の図解にまとめられて、勝手に SNS で紹介されたらどんな気分になるのだろう。
ふと頭をよぎりました。