できごと、思っていること

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ライト、ついてますか

2017-09-04

仕事でお世話になった方の内、自分と極めて近い職種の方へ、ある一冊の本を贈る習慣があります。
自分でも気に入っている数少ない習慣の一つで、過去20年間で今まで約30人くらいの人にその一冊の本を紹介してきました。
私にその本を押し付けられた人々の内、どのくらいの方が、私と同じようにその本から感銘を受けたのかは不明ですが、一年ぶりにお会いしたAさんは「何度も読み返している」「同じ作者の別の本も探して読んだ」と言ってくれました。
とても嬉しい気分になりました。
その本ライト、ついてますかの紹介です。

プラグラミング技術講習で私の生徒でもあったAさんは、この本に書いてある(問題解決でなく)問題発見の重要性は、プログラミング現場よりも、自身の現在の主戦場である出版物のデザイン現場やプロダクツマネージャーとして強く理解した、と言いました。
私の目論見は、自分よりも経験の浅いSEやプログラマーに対して、楽しみながら、ワクワクしながらできる職業なんだよと伝えたい、なんて感じです。 その実、およそコンサルタントにとって有用な事柄で埋め尽くされた内容の本であることは確かです。 ここでいうコンサルタントとは、「アドバイスを通じて他人の行動に影響を与える可能性のある職業」という意味で、世の中のほとんどの職業です。
ソフトウェアの話は一つも出てこず、システム構築に関わる話は5%しかないので、何もプログラマーだけに勧めるべき内容ではないのに、今まで私はコンピュータ技術者以外にこの本を紹介したことはありません。 自分でも不思議です。

本の内容は、問題ある現場の話が寓話的にいくつも語られ、章の最後にその話から導き出された教訓が並んでいる形式です。
翻訳本のわりには読みやすい日本語の文章だと言えるでしょう。
以下は、中で語られる一つの小さなお話。

山々を貫く長いトンネルが完成した。
トンネル内には灯りはあるが、停電するかもしれないので、入り口に「この先は長いトンネルです。自動車のライトを付けてください」と標識を出した。
トンネルを出ると見晴らしの良い休憩所があり、多くの観光客がそこを利用した。
観光客の中にはトンネルを出たのにライトを消すことを忘れ、自動車のバッテリーが上がった状態となった人が数多く出た。
それをどう解決するか。
・ほったらかす(=そもそも解決しない)…、
・バッテリー充電施設を展望台に置く…、
・「ライトを消しなさい」という標識をトンネルの出口に立てる…、
 いや、これだと夜中にライトを消す人が出るかもしれない。
 「もしも今が昼間ならライトを消しなさい、昼間でも外が暗いならライトを付けたままにしなさい、もしも消したのなら付けなさい」、こんな長い標識だと誰も読んでくれない。

この問題の解決に当たった女性の主任技師が出した答えは…。

30年前に出た初版は理系学生の間で少しだけ話題になりました。
ですがこの本の意味することは、いくつかの仕事を通じて、いろんな困難に出会った経験がないと理解できないと思います。
Aさんは「上司やクライアントには教えたくないが、同僚や部下には紹介したい」と言いました。
私はここを読んでいる皆さんに伝えたいと思いました。